源泉営業物語:第3話 9つの属性とランチェスター戦略の10年後

明大前のオフィスに流れる空気は、先ほどまでの絶望的な重苦しさとは一変し、静かで、それでいて熱を帯びたものに変わっていた。隣の空地にはビルを建築中のようで聞きなれた現場の職人の声が響く。

「広告費を使えない中小企業は、源泉営業をしないと100%無理だよ」

小林の放ったその言葉は、武藤の胸に深く突き刺さったまま、鈍い痛みを伴って響いている。武藤は自分の震える膝を隠すように、強く拳を握りしめた。

(無理……。やっぱり、俺がやってきたことは全部、最初から間違っていたのか……?) 大手時代の成功体験、独立という夢、家族への責任。それらが砂の城のように崩れ去っていく恐怖に、武藤は押し潰されそうになっていた。

そんな佐藤の動揺を見透かしたように、小林は一枚の表を机の上に静かに置いた。

「佐藤さん、これを見てください。私が体系化した『源泉営業顧客表』です」

そこには、不動産という仕事を考える上で、関わるべき顧客が「9つの属性」に分類されていた。小林は、その一つひとつを指し示しながら、丁寧に、そして深く語り始めた。

「多くの不動産業者は、ポータルサイトに問い合わせをしてくる『今すぐ客』の「売主・買主」という、9属性の中の2つだけ、全体のわずか数パーセントの狭い領域で、AIや資本力のある大手と血を流し合っています。

しかし、不動産の本質はそこにはない。空き家を抱えて困っている人、一棟アパートの将来に不安を感じているオーナー、未公開の情報を握っている銀行や仲介業者や士業の方々……。

これら9つの属性それぞれに対し、自ら動いて関係を創り出していく。それが、私が提唱する源泉営業です

武藤は、表に記された文字をなぞりながら、言葉を絞り出した。

「自ら関係を創る?自らって電話とか飛び込みですか?そんな泥臭いことを今の時代、AIが瞬時に答えを出すこの時代に、本当に通用するんでしょうか?」

武藤は飛び込営業や電話営業の経験が無いわけではなかったが、胸を張るほどやり切った思い出はない。

それは大手ならではの環境でもあるし、大手はそれこそそういった能動的姿勢が仇(無駄)になってしまうこともなる。この不動産営業で揺るぎない事実を、武藤はわかっていた。

武藤の言葉には、経営者としてのプライドをかなぐり捨てた、剥き出しの悲鳴が混じっていた。

1年間近く、ほとんど鳴らなかった電話。減り続ける残高。彼にとって「行動すること」は、もはや拒絶される恐怖と隣り合わせの苦行でしかなかった。

小林は、武藤の目をまっすぐに見つめた。

「武藤さん、面白い話をしましょう。私が2016年に優真商事を始めたとき、とにかく目の前の会員さんを儲けさせることだけに集中していました。

そして多くの成功者、つまり儲かるようになった社長や営業マンを出し続けていたある日、あることに気づき、まるで雷に打たれたような衝撃を受けたんです」

小林の声が、わずかに熱を帯びる。

「この源泉営業の手法は、1970年代から令和の時代になっても引き継がれる『ランチェスター経営』の戦略、そのものだったんですよ。弱者が強者に勝つための局地戦、接近戦の理論。それを不動産営業の現場に完全に落とし込んでいたのだと、後から気づいたんです」

というかですね、私もAIに指摘されて気づいたんです。あなたがやっているのは不動産版ランチェスター戦略そのままですと。小林は笑った後に続けた

「2016年から培ってきたこの源泉営業ノウハウは、歴史が証明している勝負の鉄則に基づいていたようなんです。だから負けないんですよね」

武藤の頭の中で、バラバラだったパズルのピースが音を立てて繋がり始めた。ランチェスター戦略。確か昔に経営の教科書で見たあの理論が、今、目の前にある「物上げマニュアル」や「ニュースレター」という具体的な武器として、生命を宿している。

「だから」と、小林は確信に満ちた笑みを浮かべて言った。

「だから、儲かるのは当たり前なんです。自ら顧客を掘り起こし、関わりを創っていく。買取再販ができるのは、当たり前!なんですよ」

いきなり大声を張り上げた小林の言葉は、佐藤の心の奥底に眠っていた小さな火種を、激しく煽った。

(当たり前? 俺が死ぬほど悩んでいたこの状況を、この人は『当たり前』に覆せると言っているのか)

武藤は、目の前の「源泉営業顧客表」を、食い入るように見つめた。建築中の職人たちの声が聞こえる、窓から光がさしている。その光は見たこともない巨大な希望に触れたことへの、希望の光に変わろうとしていた。

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5/7 朝8時公開

執筆監修:優真商事株式会社 小林英治

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