源泉営業物語:第1話 鳴らない電話と、消えゆく残高

東京都内の片隅、雑居ビルの3階。広さわずか5坪の事務所には、安物のデスクと、業者には欠かせない買い揃えたFAX、そして不気味なほど静まり返った固定電話が置かれている。

「今日も、反響が無かったな」

武藤(仮名)は、乾いた喉に冷めたお茶を流し込んだ。独立開業して1年が経とうと祖いていた。かつて大手不動産会社で「中堅のエース」と呼ばれていた頃の自信は、跡形もなく消え去っていた。

「武藤さんが独立したら物件卸しますよ!」

何人かの仕入れ業者の付き合いもあったが、開業後はお付き合い程度の査定しか来なくて、有力な物件情報はほとんど来なかった。

「どう最近?」と武藤から偶然を装い電話してみたものの、、やはり買値が高い大手に物件情報は流しているようだった。会社の看板が無いとこんなものなのか?いや俺の人望がないだけか・・ため息をしても仕方ない、と武藤は気持ちを切り替えた。

家賃15万円の事務所に入り、最初に行うのはポータルサイトの管理画面チェックだ。1か月前に一括査定の競合から何とか売主にお願いして取った専任媒介の戸建て。

しかし、画面に並ぶ数字は無情だった 「閲覧数:12、お気に入り登録:0、問い合わせ:0」 なけなしの貯金を切り崩して投入した月に10万の一括査定の広告費は、まるで底の抜けたバケツに水を注ぐように、一瞬でネットの海に吸い込まれていく。

「反響営業」という名の「待ち」の姿勢が、これほどまでに残酷なものだとは思いもしなかった。

「やっぱり、俺みたいな弱小個人には、ポータルサイトしか道はないのか……?」

かつての同僚たちは何人か独立をした。すぐにダメになったやつもいたし、何とかうまくやっているやつもいる。

話しによると最新のAI査定ツールや自動追客システムを駆使し、広告費を100万円以上掛けてようやくトントンか少しの成約を積み上げているという。

一方で武藤は、どうしたらいいのかと一人レインズの画面を見続けていた。「AI検索」に頼れば頼るほど、競合他社と同じ土俵で、資本力という名の暴力に叩き伏せられるだけだった。

夕刻、通帳を開くと、胃がキリキリと痛んだ。家賃、管理費、リース代、生活費。残高は、あと1年も持たないだろう。独立する際、「これからは自分の腕一本で、不動産の世界で名前を売ってやる」と息巻いていた自分を、今の彼は冷笑せずにはいられない。

「買取再販さえできれば……」

それが不動産業における「勝者の果実」であることは分かっている。自ら物件を仕入れ(物上げ)、リフォームして価値を高め、利益を最大化する。しかし、その「仕入れ」のやり方が、どうしても分からないのだ。

それは「AI検索」をしてもどうしてもわからなかった。WEB上の情報を精査して回答するAIでは、実務の複雑な交渉を載せるなんていう不動産関係者がいない限り、回答が不可能だからだった。Xもくまなく見てみたが派手な成果報告は溢れているが、実際のやり方や交渉事を載せている人は皆無だった。

それもそのはず、武藤は未経験ではない。ある程度の経験を積んだ男だ、何も知らない訳がなかったが買取再販はエンドに売る場合と買主業者が買う場合があり、どちらのケースも「緊急度」で左右されてしまう。

需要と供給のバランスであり、エンドは家族事情・人生事情や転換期、買主業者は決算期前は買わざるを得ない場合があり判断基準が「今回の物件だけ」と大きく変わる時がある。

それをAIが明解に示せるはずもなかった。

仲介会社のあいさつ回りをしても、出てくるのは既にネットに公開された「手垢のついた物件」ばかり。御社で買える?と言われても買えるわけがない。

エンド客に飛び込もうにも、何を話せばいいのか分からず、門前払いを食らうのが目に見えている。大手時代、自分の手元に届いていた情報は、すべて会社が整えてくれた「お膳立て」に過ぎなかったことを、武藤は痛感していた。

「誰も、本当の仕入れ方なんて教えてくれない」「手数料商売の仲介は高額物件をやらないとむしろ厳しくなる、どこかで買取再販を教えてくれるところは無いのか?」

孤独、焦燥、そして後悔。夜、事務所の電気を消した後の暗闇が、彼の心をじわじわと侵食していく。娘の優子はまだ1歳、何とかしなければ。

独立という夢は、いつの間にか、終わりの見えない悪夢に変わっていた。深夜、薄暗い部屋でパソコンのブルーライトに照らされながら、彼はダメ元で「不動産 物上げ 方法」と検索した。

膨大な広告記事をスクロールし、疲れ果てて画面を閉じようとしたその時、一つの見出しが目に飛び込んできた。

『あなたが稼げない理由は「反響営業」で「AI検索」するから』

その言葉は、暗闇の中で藤波の胸を鋭く貫いた。吸い込まれるようにクリックした先には、強烈なメッセージが並んでいた。

『仕事なんてゲームだ。主役に、なろうぜ。』

「優真商事……? 源泉営業……?」

それは、彼がこれまで信じてきた「待ち」の営業を根底から覆す、「プッシュ型営業(源泉営業)」という未知の世界への扉だった。武藤は、貪るようにそのブログを読み始めた。かつての自信の欠片が、かすかに熱を帯びるのを感じながら。

5/5 朝8時公開

執筆監修

優真商事株式会社 小林英治

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